セザンヌ論:秩序ある感覚

23.10.2017
Paul Cézanne (1839 - 1906) Le cruchon vert (Photo© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Tony Querrec), Musée d'Orsay, conservé au Musée du Louvre, Paris.

Paul Cézanne (1839 - 1906) Le cruchon vert (Photo© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Tony Querrec), Musée d'Orsay, conservé au Musée du Louvre, Paris.

セザンヌ作品に精通する美術史家ローレンス・ゴウイングは、『Cézanne, La logique des sensations organisées(セザンヌ論:秩序ある感覚)』の中で、この巨匠の作品を新たな観点から論じています。何よりもまず画法やマチエール(質感)に注目しているのは、おそらくゴウイング自身も画家だったからでしょう。それが何を表し、何を証明しようとしているのかを問う、あるいは解釈する以前に、彼はキャンバスを手に取って、じっくりと、あるがままに見ようとしたのです。

ゴウイングは、非常に得るところの多いセザンヌの書簡や有名なエミール・ベルナールの著作を引用しながら、自身の直観を注意深く文書にすることで、読者の関心を、サン・ヴィクトワール山の地質ではなく、色彩や線、そしてセザンヌが呼ぶところの“関係性”に惹きつけようとしました。「ここには線も造形も存在せず、あるのはただコントラスト(対比)だけだ」と述べ、宗教的ともいえる熱意を持って修練を重ねたセザンヌ。1977年10月から1978年1月にかけてニューヨーク近代美術館で開催された展覧会『晩年のセザンヌ』において、ゴウイングは1点ずつ作品をたどりながら、この画家の歩み、ならびに彼が晩年に提唱した、“彩る感覚”を通して“自然を読む”ためのさまざまな取り組みを回顧することに決めました。

この評論に掲載されている図録は、ゴウイングの考察を裏づける実例として、とても興味深いものです。『Le cruchon vert(緑の水差し)』と題された水彩画は、セザンヌの思考が発展する過程で重要な作品と思われ、ゴウイングはその独創性を指摘しています。水彩画に対するセザンヌの独自の考え、すなわち彼が水彩画を油彩画のためのスケッチではなく、芸術そのものと見なしていたことがわかります。それゆえに、異なる手法、異なる技術が要求されたのです。

ゴウイングは著作の中で、鋭い洞察に加え、セザンヌの野心に敬意を表し、自身の基準に従って作品を評価しました。セザンヌを巨匠たらしめる要因として、その細やかさを賞賛し、自らの芸術を完成させる前に死を迎えるかもしれないという思いを抱いた画家の晩年の絶望に触れ、こう結んでいます。「偉大な画家における真の達成とは、その者の人生である」。