音の在る時間を夢見て

11.04.2017
La Monte Young

La Monte Young

カリーヌ・ル・ベイルによる寄稿

思い浮かぶのは、シェーンベルクの音色旋律、イタリア人作曲家ジャチント・シェルシが誘う“ひとつの音”への旅、あるいはジョン・ケージの作品『心像風景』でしょうか。いずれにしても、20世紀の音楽家たちは、音色や響きといった誰もが知るあたりまえの観念に、つねに疑問を投げかけてきました。ここでは、アメリカ人作曲家、ラ・モンテ・ヤングを取り上げてみましょう。テリー・ライリーやフィリップ・グラス、スティーヴ・ライヒほど世に知られていませんが、最も興味深いミニマル・ミュージックの作曲家のひとりです。現在81歳になるラ・モンテ・ヤングは、商業音楽から離れた世界で確固たる地位を確立し、「非常に長い時間、時として永久的に」演奏される音楽を創作し続けています。

この“永遠の音”を夢見る音楽家は、ジャズ・ミュージシャンとしてキャリアをスタートしましたが、やがてシュトックハウゼンやケージの作品に出会います。1950年代末、ジョーン・ジョナスやアンディ・ウォーホルといったアーティストたちと共に、ヤングをアメリカのコンセプチュアル・ミュージック・シーンへと導いた人物こそが、ケージでした。ヤングは、オノ・ヨーコがニューヨークにある彼女のロフトで行なった、あの有名な“ハプニング”に参加した後、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのメンバーとしても知られるアンガス・マクリーズやジョン・ケイルらと『The Theatre of Eternal Music(永久音楽劇場)』を設立しました。

1960年代初め、ラ・モンテ・ヤングは、パートナーのビジュアル・アーティスト、マリアン・ザジーラと共に『Dream House(夢の家)』という作品を創り、この驚くべき音と光のインスタレーションは世界各国で展示されました。『夢の家』に足を踏み入れると、そこには五感に強く訴える体験が待っています。全体がネオンピンクに染まった部屋の中では、モビールが光を反射し、スピーカーからは絶えず寄せては返す音の波。エレクトロニクスが、自らの心の声、そして無限に再生される音を聴くことを可能にしたのです。それは、ローリング・トゥウェンティーズと呼ばれる1920年代、ジャン・コクトーが書いた夢を体感することでもありました。「私は音楽で作られた家を建て、そこに暮したい」。