華道

05.04.2016
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生け花は日本の伝統文化です。仏教圏には古来より死者に花を供える儀式や習慣が存在してきましたが、日本では宗教的な要素を排した、華道と呼ばれる象徴的芸術へと発展しました。 

生け花には600年の歴史があり、さまざまな流派や教室が存在します。当初は貴族や僧侶にのみ許される嗜みでしたが、後にあらゆる階層の人々にまで広がり、近代化と共に新たな様式や解釈も生まれました。

主に色彩の美しさを愛でる西洋のフラワーアレンジメントと違う点は、生け花が単なる装飾ではないということです。色や質感、力強いフォルムの取り合わせによって生まれる調和。すべての生け花作品には型があり、それは天と地と人から成る宇宙の均衡を表しています。しかし、日本の伝統芸術すべてに言えることですが、様式や技法の簡単な説明だけから心血を注いで制作した作家の内面を読み取ることはできません。心の静寂と集中力、感性が互いに作用し合い、見事に調和してこそ、作品は完成するのです。

生け花には花の他に、蕾や葉、茎、果実、枝、苔…植物のさまざまな部分が使われますが、花材だけではなく、花瓶や鉢といった花器もまた大切な要素です。さらに、花材と花器の間に創られる左右非対称の“無の空間”。生け花というアートの美しさは、人間の手で創られた、自然界には存在しないものですが、宇宙の静けさと呼応しています。

日本の生け花は、西洋のアールヌーヴォーにも影響を与えました。植物モチーフだけでなく、左右非対称の美しさが、幾何学的なルネサンス美術の流れを継承してきた芸術に新たな発想をもたらしたのです。生け花には二度と再現することのできない職人の手仕事という側面もあり、ウィリアム・モリスやジョセフ・ホフマンといったアーティストのお手本になりました。彼らの作品には日本の美意識が色濃く感じられます。

もっと最近では、現代アーティストのカミーユ・アンロが、静寂のうちに語る生け花にインスパイアされた”Est-il possible d’être révolutionnaire et d’aimer les fleurs? (Is it possible to be a revolutionary and like flowers?)”という作品を発表しています。伝統的な華道の手法を用いながら、あらゆる本を彼女なりの解釈で生け花として創り上げ、西洋の図書館を変貌させたのです。このインスタレーションは、花と本が共に持つ心を癒す力を表現したものでした。