Eau des Sens

10.03.2016
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『Eau des Sens(オー デ サンス)』は、さまざまな香りを組み合わせて創られた、濃密なオードトワレです。その名はsense(センス)とessence(エッセンス)を掛けた言葉遊び。嗅覚とその他の感覚を結びつけひとつに調和させるという多義的な特性を表しています。『オー デ サンス』の香りと名前、そこにはdiptyqueの原点からの系譜が受け継がれています。

『Eau des Sens(オー デ サンス)』は、原点への回帰という意味において、革命的といえるでしょう。これまでのdiptyqueの歴史を振り返れば、オードトワレはつねに原材料からインスピレーションを得て創られてきました。ですが、この新しいオードトワレでは、「五感のすべてを刺激する」という発想に始まり、それを形にするための原材料としてビターオレンジが選ばれた…つまり、まったく対称的な経緯で生まれたものなのです。

苦みのある柑橘類の香りは、心の奥深く、嗅覚の記憶に刻まれています。子供の頃の思い出と結びついた、甘酸っぱくて、強く印象に残る味わい。それは、性別を問わず、だれもが惹きつけられるdiptyqueのオードトワレに共通する魅力でもあります。

果実、花、枝…ビターオレンジの木から採れるあらゆるエッセンスが惜しみなく配合され完成する『オー デ サンス』。熟した実の果皮から抽出されるビターオレンジオイルのはかない香り。グリーンノートには枝からわずかに採れるプチグレンのエッセンスを、そして花を蒸留して作られるネロリがまぎれもないフローラルノートを添えています。硬く苦い果皮や枝から、柔らかく官能的な花や果実に至るまで、木の生命サイクルのすべてがこのオードトワレに息づいています。苦さと甘さが競い合うようにして香りの連鎖を頂点へと高めていく…そこに続くのはジュニパーベリーの「予期せぬ香り」、強い存在感に衝撃を受けます。パチュリがその世界をふくらませ、ほのかに甘いアンジェリカが加わって、香りの輪は完成します。

五種類のエッセンスが絡みあい、うち四種類がさらに溶け合ってひとつの香りを放つ『オー デ サンス』。嗅覚によって他の感覚が開花するというのが、当初のコンセプトでした。ビターオレンジから始まる香りの連鎖は、いわば空中に漂うメタファー。共感覚、すなわち五感の融合という発想を香りによって表現したのです。

『オー デ サンス』はまた、diptyqueのオードトワレの歩みを想起させます。『L’Eau(ロー)』、『L’Ombre dans L’Eau(ロンブル ダン ロー)』、『L’eau Trois(ロー トロワ)』とも共通する、隠語を思わせる語感…どのオードトワレも、時を経ても解明されることのない謎めいた世界が隠されているかのように響きます。

最後に、イラストレーションについても触れておきましょう。このフレグランスの持つ多面的ながらも調和した香り、そしてそれがもたらす刺激は、diptyqueが創業した60年代初期に生まれたオプ・アートの錯視効果と呼応しているのです。

ここまでは、五感にまつわるお話、そして、最初にアイデアを思いついてから、原材料を決め、実際に香りが誕生するまでに費やした最初の数年間について語ってきました。過去から未来へ、『オー デ サンス』、共感覚、そしてオプ・アートが奏でるハーモニー。それについては今後の記事でさらに明らかにしていくことにしましょう。