高利貸と星たち

17.12.2017
Giotto (1266/7-1337) - Fresque de la chapelle Santa Maria della Carità all’Arena (Saint Marie de la Charité de l’Arène) à Padoue (détail): partie de la voûte située à l’ouest, du côté de l’entrée de la chapelle. La Vierge Marie portant l’enfant le Christ dans le médaillon central est entourée de quatre médaillons où figurent des prophètes.

Giotto (1266/7-1337) - Fresque de la chapelle Santa Maria della Carità all’Arena (Saint Marie de la Charité de l’Arène) à Padoue (détail): partie de la voûte située à l’ouest, du côté de l’entrée de la chapelle. La Vierge Marie portant l’enfant le Christ dans le médaillon central est entourée de quatre médaillons où figurent des prophètes.

天の声は計り知れません。ダンテの『神曲』で地獄に堕ちた高利貸のひとりが自身の父レジナルドであったことを考えると、エンリコ・スクロヴェーニは全能の神を恐れずにいられなかったことでしょう。『神曲』地獄篇の第17歌には、「白地に空色の太った雌豚模様の財嚢」を握った男と書かれており、これはスクロヴェーニ家の紋章です。

父の魂を救済するため、そしておそらく自分自身の「不当なもうけ」に対する贖罪のために、エンリコはスクロヴェーニ礼拝堂(アレーナ礼拝堂)をパドヴァに建設。1305年3月25日に献堂され、聖母マリアに捧げされています。この礼拝堂は、高利貸という罪によって得た利益に対する償いを象徴する存在で、キリスト教会から赦しを得るためには無くてはならないものでした。

礼拝堂に入って祭壇に向かうと、エンリコは必ず円天井の一箇所を見上げ、そこに描かれている幼いイエスを膝に乗せた聖母マリアに祈りを捧げました。聖母とその幼子だけが自分の魂を救ってくれると、エンリコは信じていました。それから彼は、天井のもう一箇所にあるキリストの肖像画を仰ぎ見ました。聖母マリアと同じように、キリストは4人の預言者たちのフレスコ画に囲まれています。星が瞬く完璧な青空に、聖母マリア、キリストとその預言者たちのフレスコ画は、ジョットが描いたものです。

7世紀後、私たちが眺めているこの空は、色あせています。紺青はかつてのような明るさを失い、おそらく金色だったと思われる後光や八芒星も変色しています。ですが問題ではありません。なぜならこの空も、世界の終焉と共に消えることが運命づけられているからです。それは、礼拝堂の入口のすぐ上にある『最後の審判』の絵に向かうエンリコ・スクロヴェーニにもわかっていました。窓の両脇に、まるでそれがカーペットであるかのように空を巻く、ふたりの天使の姿が見えます。まもなく左側にある太陽と右側にある月も消えるでしょう。そして星たちも同じく…。