香り立つデッサン

19.10.2018
Dessin de Desmond Knox-Leet

Dessin de Desmond Knox-Leet

diptyqueの本来の使命は、パフューマーであること。しかし、運命は巧みに、香水とデッサンを引き合わせます。3人の創業者が、画家でもあったためです。diptyqueの香りは今日に至るまで、デッサン上に墨のラインで刻まれ続けてきました。

 

‘デッサン’は、mementoにとって大切なテーマの一つ。創業者たちの絵画への傾倒については、詳しくお伝えしてきました。目を閉じて幸せな記憶を再現する楽しみのように、ここで一つの事実に改めて触れることは、喜び以外の何物でもありません。というのも、こうした記憶が継続への意欲を明確にし、忍耐の理由を強調するとともに、一つのアイデンティティーの輪郭を鮮明にするからです。それは常に描き直され、新たな‘デッサン’のスタートによってのみ類似性が確認されるアイデンティティーです。ちなみに、dessin(デッサン)とdessein(構想)は類似する同音異義語ですが、それだけでは足りません。同音異義である以上に、それは本質的に、diptyqueが香りと視覚、香水とイメージ、鼻と手の間に育んできた、‘血縁関係’にあるのです。

もちろんdiptyqueの事業の原点は、デスモンド・ノックス=リットとクリスチャンヌ・ゴトロによるテキスタイルモチーフのデザイン。3人目の創業者、イヴ・クエロンはそこで経理を担当していましたが、彼もまたかつて、絵を嗜んでいました。

graphie(「書記法」)に夢中であったデスモンドは、自らの筆で、キャンドル用にダンシング・レターから成るdiptyque特有の飾り文字、次いでロゴを考案し、ついには香水のラベルデザインを手がけています。絵を描き続け、彼の旅先のスケッチブックはメモ書き以上に、絵で埋め尽くされていたほど。彼の没後は盟友イヴが後を引き継ぎ、自ら香水のラベルをデザインしました。

もちろんそれは、香水に絵を添える行為。しかしこれらの香水は、手ではイメージに写し取れない景色や旅、光景から生まれたものです。彼らはそこで、ある方法をスタートさせます。それは、一つ一つの香水を画家やグラフィックデザイナーと結び付ける、今でもdiptyqueが実践し続ける方法です。揮発性油と移ろうイメージから成る、想像上の物質の提案。香水液とインクがシルエットを描き、その実体が香りを吸い込む人々の感覚となります。この香りの感覚には、視線を誘うデッサンという「窓」を通した、想像の部分が含まれるのです。

 

オードトワレやオードパルファンのラベルの裏に、この絵が描かれています。それは香水を通してしか見ることができません。この漂うデッサンは、インクの軌跡を辿り、香りの道を究めるdiptyqueのイメージと重なります。