舞台美術

27.11.2016
Le temple Salomon, décors de Philippe Ricquier de 1846 (source gallica.bnf.fr / Bibliothèque nationale de France)

Le temple Salomon, décors de Philippe Ricquier de 1846 (source gallica.bnf.fr / Bibliothèque nationale de France)

舞台美術 エーヴ・マスカローによる寄稿

長らく劇場の舞台美術は、ただ単にステージの上で繰り広げられる芝居の背景に過ぎないと考えられていました。魔法のランプもお城も…ただ状況や場所を説明するためにそこに描かれていただけでした。 

立体的な舞台セットが登場したのは、19世紀後半になってからのこと。それまでは、舞台美術のプロではなく他に本業を持つ職人たちが背景を描いており、劇場は彼らが各々の工房で制作した背景をいくつもの芝居で使い回していました。幻想的な背景を得意とする工房もあれば、自然の風景を得意とする工房も…職人たちにはそれぞれ得意分野がありました。とはいえ、現在のような絵柄の統一性はなく、職人たちはある特定のシーンの背景を描くだけ。彼らは、キャンバス一平方メートルあたりいくらで仕事を請け負う業者に過ぎなかったのです。

やがて演劇における舞台美術の役割は、新たなステージへと進んでいきます。まず、舞台上にさまざまな小道具が登場するようになり、背景も根本的に見直されることになりました。かつて舞台の下から俳優たちを照らしていたフットライトも姿を消しました。何よりも、照明の明暗を調節できるようになったことが大きな進歩でした。それまでの劇場は客席が明るく、観客同士の目が合う社交場としての一面を持つ空間でしたが、この頃には、俳優たちが演じる舞台に照明が当てられるようになります。芝居のシーンがくっきりと浮かび上がり、ストーリーに集中できるように工夫が施されました。 

演劇と舞台美術の結びつきは、よりいっそう重要なものとなり、かつてないほど密接になりました。これらの要素は互いに影響し合うようになり、俳優たちも然り。彼らはもはやセットの前ではなく、セットと共に、舞台美術という空間の中で演じているのです。