現代アートにおけるパターン

08.10.2016
François Morellet (1926-2016), 4 doubles trames 0°-22°5-45°-67°5, 1958. Copyright : © Christie’s images, 2016

François Morellet (1926-2016), 4 doubles trames 0°-22°5-45°-67°5, 1958. Copyright : © Christie’s images, 2016

夢想家であり創造主…芸術家に対するそんなロマンティックなイメージを覆すかのように、20世紀のアーティストたちの多くは神秘性を剥ぎとった表現方法を発展させてきました。連作で表現されることの多い彼らの作品では、アーティスト自身よりも、その構造や背景、あるいは法則が強調され、制作者の意思を越え自立した存在としての一面が際立っています。これらのアーティストたちは、ヴァルター・ベンヤミンの有名な言葉を借りるなら、「複製技術時代の芸術作品」のあり方を見つめていかなければならなかったのです。写真や映画が隆盛を極め、印刷技術や工業製品が進化を遂げる中、アートはこの新たな環境に適応し始めました。

20世紀のこうした美術界の流れが反映された結果、異質な作品が数多く生まれました。キャンバスにスクリーンプリントされた連作ポップアートはその代表で、60年代のアメリカを象徴する大量消費社会を映し出しています。アンディ・ウォホールが『32個のキャンベルのスープ缶』を発表した際、すべての作品は同じサイズで、まるでスーパーマーケットの棚に並んでいるかのように展示されました。ウォホールは、広告業界で浸透効果を狙って用いられる反復手法を使って、鑑賞者の目にスープ缶のイメージを焼き付けたのです。 

一方、抽象表現主義の発展形として同時期に登場したミニマリズムについても同じような流れがありました。それは、極限までシンプルに削ぎ落とされた表現形式。たとえば、フランク・ステラの平行線と同心正方形。ドナルド・ジャッドの金属製の長方体。カール・アンドレの木を組み合わせた立体や銅製のスクエア、アルミニウムの板。ダン・フレイヴィンの蛍光灯アート。それが線であれ、形であれ、色であれ、物質的現実だけを捉えた作品は、アートから象徴的な側面を取り除き、いずれも「less is more(少なければ少ないほどいい)」という必須条件を満たしたものでした。 

フランスでは、フランソワ・モルレ(2016年5月没)が、あらかじめ定めた原則に基づき設計されるシステムをアートに取り入れていました。彼は、1952年、グラナダのアルハンブラ宮殿を訪れ、そこで出会ったモチーフに影響を受けます。彼いわく、それは「歴史上もっとも知的で、精密で、洗練された、システマティックなアート」でした。モルレは幾何学や数学の原理を用いて、線や形の配置(重複、並列、回転、干渉、分裂)の指針となる法則や制約を定義しながら、自らの作品を制作しました。キャンバスに描かれたモルレの作品はいずれも、定規や距離測定器、コンパスなど、いわゆるアートのための道具ではない日常的なツールを使って生み出されたものです。前景・背景や境界線、奥行き、中心や余白といった観念を廃した「均一な平面(オールオーバー)」と呼ばれる構造の作品の中では、モチーフは無限に続く自律的な存在であり、キャンバスという物理的な限界を越えて広がりを見せるのです。

1950〜60年代に活躍したモルレや同世代の作家たちは、デジタル時代のテーマを取り上げながら同様の探求を続ける今日のアーティストたちに影響を与えてきました。ウェイド・ガイトン(汚れやエラーなどの要素を生かしたインクジェットプリント作品)、ケリー・ウォーカー(マスメディアのイメージを発展させたレプリケーション)、マーク・グロッチャン(放射線状のパターンのバリエーション)といったアーティストたちは、いずれもパターンや繰り返しを創作プロセスの中心として位置づけながら作品を制作しています。

ポール・二ザム(「クリスティーズ」現代アート部門)