時代

31.05.2017
Ossip Emilievitch Mandelstam (1891-1938)

Ossip Emilievitch Mandelstam (1891-1938)

時代

私の時代 私の獣よ 誰がお前の

瞳を覗きこみ

自らの血で 二つの世紀の

脊椎を結び合わせようというのか?

この世を創った血が

生けるものたちの喉からほとばしり

新たな日々の始まりに

居候たちが震える

生きる命のある限り

脊柱を運ばなければ

目に見えぬ背骨に

波が砕ける

やわらかな幼子の軟骨のように

地球の幼年時代

さらなる捧げものとして

人生の頭のてっぺんが 子羊の如く供される

世紀を牢獄から解き放つために

新たな世界の始まりのために

日々節くれ立つ膝を

フルートが束ねる

人間の悲しみに添うように

この時代は波を立て

毒蛇が潜む草むらで

時代が黄金の旋律を刻む

再び新芽がふくらみ

緑が萌える

しかしお前の背骨は折れたまま

私の哀れで美しい時代

そしてお前は 意味のない微笑みを浮かべて

うしろを振り返る 残酷で弱々しい

かつてはしなやかに動いた獣が

その足跡を眺めるように

オシップ・マンデリシュターム(1891-1938)は、ロシア帝国領ポーランドに生まれた世界的詩人。「彼は現代のオルフェウスであり、黄泉の国へと消え、以来この世に帰還していない。彼の未亡人は、詩の書かれた巻物が入った壷を携えて、地球上にある隠れ家から隠れ家へと移り住むこと6回。捜査令状を持った狂人たちに見つかることを恐れながら、毎晩その詩を読んでいた。これこそが、我々の変容であり、神話なのだ」(ヨシフ・ブロツキー(1940-1996)ロシア人詩人、ノーベル賞受賞者)

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