『星形のひび割れ』を讃えて

13.02.2018
Simon Hantaï, 1980 (collection Jean-François et Marie-Aline Prat, Christie's Paris, © Christie's images, 2017)

Simon Hantaï, 1980 (collection Jean-François et Marie-Aline Prat, Christie's Paris, © Christie's images, 2017)

邂逅とは、日常の流れから切り離された出来事で、普段とは異なる交流を生みます。それは避けることのできない、ふたりの人間の「運命の力」によるものと言えるでしょう。新しい視点をもたらし、人生を変えてしまうのです。『星形のひび割れ(L’ étoilement)』は、画家シモン・アンタイと哲学者ジョルジュ・ディディ=ユベルマンの実りある出会いの証です。ふたりの対談は、フォンテーヌブローの森の端、ムンという小さな村にある日当たりの良いアトリエで行われ、批評的思考の必要性に応えています。

ディディ=ユベルマンは、アンタイに長い沈黙を破り、再び作品を発表するよう説得していました。アンタイは、1982年、名高い美術館がこぞって彼に注目していた頃、アートの世界から身を引きました。その引退は、画家としての活動をやめるという意味合いではなく、後には「僕は絵を描くことをやめたわけではない。芸術を取り巻くビジネスから、何よりも穴埋めとしての役割から身を引いたんだよ」と告白しています。その見返りに、アンタイはこの哲学者に対し、さまざまなテーマについて考察するよう求めました。視覚の限界、時間と空間のパラドックス、裂け目としてのイメージなど、その思想は初期の著作『イメージの前で(Devant l’image)』や『私たちが見ているもの、私たちを見つめているもの(Ce que nous voyons, ce qui nous regarde)』にまで遡ります。 

“プリアージュ(Pliages)”という手法を用いたアンタイの作品には、芸術を「優れた弁証法的くさび」と見るディディ=ユベルマンと響き合うものがありました。『Mariales』と呼ばれる一連の作品では、キャンバスを折りたたみ、しわを寄せ、その上から無作為に色を塗ることで、広げた際に折りたたまれていた部分が白く残り、抽象的な色の爆発が創造されています。この手法は『Tabulas』シリーズで頂点に達し、余白が作品に生き生きとした印象を与えています。芸術家がキャンバスの裏側にある結び目をほどくと、そこには星形の模様が現れます。そこでは、空白と充満、目に見えるものと見えざるものとの間に存在する緊張関係が明らかにされるのです。 

ディディ=ユベルマンが指摘したように、折り目が生む星形のひび割れには、退色が見られます。光の影響により、色があせ、鮮明さが失われているのです。画家が自分の庭に埋めた作品を掘り起こしている様子を撮った写真を思い出します。これらには、時間の層や不純物が見て取れます。折り目とは、言い換えれば、裂け目でもあります。アンタイは『Tabulas』を切り刻んで、その切れ端を掃除に使い、再び折りたたみ、色を塗り直してから、またひとつ縫い合わせました。作品のタイトルは”Pliages à usage domestique (Salissures sur toile pliee)”。掃除に使用したプリアージュ、汚れた布を折ったもの、という意味です。残った布は堆肥にされました。

アンタイの作品は、美と退化、哀悼と熱望の境界にあります。アンタイが2008年にこの世を去ってから、ディディ=ユベルマンが『星形のひび割れ』と題したエッセイの文末に綴った言葉は「現在の追憶」のように聞こえます。「画家の沈黙は、今も耳元でささやき続ける。渇望は、くつわと経帷子を通り抜ける。これらの作品は私たちの目の前にある。永久にその存在を示し、折りたたむことによる成果を、惜しみなく与えながら」