星でできたドラゴン

24.12.2017
Philippe Baudelocque - Dragon

Philippe Baudelocque - Dragon

エルタニンとラスタバンは、暗闇にチカチカと光るふたつの目。そしてグルミウムやニューなど、さまざまな星が顔の輪郭を描いています。さらにアルタイス、カイ、ゼータ、シータ、エダシク、トゥバン、カッパといった星々が屈曲しながら、星でできた怪物の体をねじります。

かつてはこぐま座がその翼を担い、この伝説の生き物に威光を与えていました。星でできた翼を失ってなお、りゅう座は宇宙に88ある星座の中で8番目の大きさを誇ります。こぐま座とこと座の間にダイヤモンドの形をした頭をもたげ、その両目ははくちょう座の北側の翼と並んでいます。おおぐま座に沿って尾があり、となりにはきりん座、ケフェウス座、はくちょう座、ヘラクレス座、うしかい座が連なっています。りゅう座は北半球の温帯地域(緯度40と50°Nの間)からは一年を通じて見られることから、いわゆる周極星座と呼ばれています。りゅう座は紀元2世紀にプトレマイオスによって発見された、古代の星座です。

りゅう座α星の別名、トゥバンはアラビア語で蛇を意味し、かつての北極星でもあります。古代エジプト文明では崇拝の対象とされ、多くの文化的建造物はその方向を向いていました。トゥバンは太陽から300光年離れた連星で、その300倍の明るさがあります。その後、地球の歳差運動によって、北極にもっとも近い地点がこぐま座α星、ポラリスとなり、しばらくは北極星としての役割を担います。西側の目であるエルタニン、公式名称りゅう座γ星は、りゅう座の中でもっとも明るい星です。この橙色に輝く巨星は太陽の600倍以上明るく、およそ150光年離れていますが、150万年後には、私たちの住む太陽系に30光年以内の距離まで近づくことが予測されています。もうひとつの目、ラスタバン、公式名称りゅう座β星は、アラビア語で「蛇の頭」を意味するアル・ラス・アル・トゥバンに由来します。ラスタバンは太陽の40倍の大きさがある超巨星で、約400光年離れています。りゅう座にはさらに、第3の目があります。親しみを込めてキャッツアイ星雲と名づけられた、惑星状星雲NGC 6543です。

りゅう座にある観測可能な217の星の中で、りゅう座の属格を持つミュー(別名アルラキス)、ニュー、オミクロン、プサイは連星、そしてりゅう座39番星が、重力の相互作用により複雑な形に見える三重星です。しかし何よりも、りゅう座は太陽に似た黄色矮星、ケプラー10を擁し、その惑星系には太陽系外惑星ケプラー10bがあります。このケプラー10bは、太陽系外でもっとも小さなスーパーアース(巨大地球型惑星)として知られています。

りゅう座には、渦巻銀河NGC 5866を含め、多くの銀河が存在します。また、もっとも遠い天体はクエーサー。うるう年を含め、70億光年離れた準恒星状の点光源です。

夜空に輝くあのドラゴンの正体は、実のところ、よくわかっていません。この生き物は無数に存在し、世界中で見つかっています。発祥はギリシャ神話であると推測されますが、果たしてその中のどれなのでしょうか?ピュートーン、ヒュードラー、コルキスの竜、テーバイのドラゴン…。あるいは、あのラードーンかもしれません。ラードーンは、ヘスペリデスの庭にある黄金の林檎を守るようヘーラーに命じられ、それを盗みに来たヘラクレスに殺されてしまいした。ヘーラーは、その功績をたたえ、亡骸を天上に架け、星座にしたのでしょう。ところが、へび座にもラードーンがいるのです!それは、こぐま座とおおぐま座の間で姿を変えたゼウス自身なのかもしれません…。