宇宙:暗く輝く

30.01.2018
Albrecht Dürer (1471-1528) - Melencolia (gravure, 1514)

Albrecht Dürer (1471-1528) - Melencolia (gravure, 1514)

宇宙はパラドックスに満ちた場所です。闇と光、黒と白、そして暗黒と光明の戦いに対する比喩。黒い空、黒い夜、ブラックホール、暗黒物質、黒い太陽…。銀河、白銀の月、月光…。物理学者も詩人も、宇宙の謎、その相反する矛盾を抱えた世界を描写し、解明しようとしてきました。劇作家ピエール・コルネイユは『ル・シッド』(1682年)の中で、「星々から降るこの暗い光」と書きました。近年では、映画監督デレク・ジャーマンが著作『クロマ』(1994年)にこう記しています。「銀河の向こうには、あの星たちが輝く、原初の暗黒がある」

暗黒といえばまず、夜の闇…。詩人ランボーはそれを「黄金の空に現れる黒い海賊船」と表現しました。瞬く星の間に見える暗い夜空。「夜空が暗いのはなぜか」。これは天文学者ハインリヒ・オルバースが1823年に呈した疑問です。驚いたことに、この「オルバースのパラドックス」の解明を試みたのは、詩人のエドガー・アラン・ポーでした。ポーは散文詩『ユリイカ:物質的宇宙ならびに精神的宇宙についての論考』(1848年)の中で、光の速度は有限であり、星々にも寿命があるというオルバースの主張を検証しました。「望遠鏡があちこちの方角に虚空を見出すことに対する唯一の説明は、目に見えない背景までの距離が非常に離れているために、そこからのいかなる光線も我々のもとに届いていないと推測することである」。私たちが宇宙の背景として眺めている暗闇にはたくさんの星がありますが、その光は地球にまで到達しないのです。夜空は暗いのではなく、実際には非常に明るいのですが、闇の中にある光を見ることができない私たちの目にはそう映りません。観測の限界により夜は暗く、光をとらえられない私たちの目が、その闇をさらに深くしています。しかし、物理学者たちは、さまざまな装置を使って、天空に星の明るさを取り戻そうとしています。

ブラックホールでは、黒は強い重力を持っています。形容詞としての「黒」はもはや光と相反するばかりではなく、そのすべてを飲み込んでいます。ブラックホールとは、非常に密度の高い天体のことで、強力な引力が光すら吸い込み、それが名前の由来にもなっています。ブラックホールは、時空を歪め、何ものも脱出できない底なしの井戸。制御不能な抽象概念であり消滅のシンボル。大質量の星の死による結果がブラックホールであり、そこからは、自由で不滅にすら思えた光でさえ、出てくることができません。

ブラックホールに吸い込まれた物質はやがて放出されるという宇宙物理学者もいます。それは宇宙のどこか、“ホワイトホール”、詩的に“白い泉”とも呼ばれる時空連続体から“吐き出され”ます。ブラックホールとは対照的で相反するホワイトホールは、地球から何億光年も離れたところで輝いている活動銀河核、クエーサーではないかと考えられています。

宇宙の闇と夜の暗さは、暗闇に対する私たちの恐れ。未知のもの、虚無、死、ロールシャッハテストによって明らかになる深層心理と結びついています。「このように、複雑な形をした黒いしみによって、その深層が明らかになること、それだけで私たちを闇に沈めるには十分である」(ガストン・バシュラール『大地と休息の夢想』1946年)。闇とは死に至ることを意味しています。「それは時空の亀裂に落ちること。そして底に到達したとき、詩人は闇と出会うのだ」(ガストン・バシュラール 『大地と意志の夢想』1948年)。

詩の中にも闇は存在します。「私は暗い者、妻を亡くした者、慰めようのない者だ(中略)私の唯一の星は死に、星を散りばめた私のリュートが/憂鬱という黒い太陽を運ぶ…」(ジェラール・ド・ネルヴァル『幻想詩篇』より『廃嫡者』1854年)。深い憂鬱、そこにはギリシャ語で”melaina chole“ラテン語で”atra bilis”と呼ばれる闇が潜んでいます。この詩人は、黒い太陽が暗い光を放つデューラーの銅版画『メランコリア Ⅰ』(1514年)に触発されてペンを取り、黒い太陽を象徴とした詩を書きました。ヴィクトル・ユーゴーが『静観詩集』(1856年)に収められた『影がその口で語るもの」という詩の中で描いた「闇が輝き出す黒く恐ろしい太陽」を思い起こさせます。「星のうろこを纏い身をくねらせるヒュドラのような世界/そこではすべてが浮遊し、暗い渦の中に消えていく/淵も始まりも壁もない深遠/(中略)勇気をふるいその底を見下ろすと/生命と息吹と音の彼方に/闇が輝き出す黒く恐ろしい太陽」。

無限の宇宙。私たちが理解しているのは、そのほんのわずかに過ぎません。この謎に満ちた、目に見えない場所、暗く広大な空間、星空、その姿をとらえようとする科学的探究や形而上学的思考、詩的表現…。

「闇には際限がなく、想像はその影の中を駆け回る。手を伸ばせば触れられそうな夢が夜を走り抜ける」(デレク・ジャーマン『クロマ』1994年)