劇場の時間

07.06.2017
Samuel Beckett (1906-1989), affiche de théâtre pour une mise en scène par Roslaw Szaybo en Pologne (Source Bibliothèque nationale de France)

Samuel Beckett (1906-1989), affiche de théâtre pour une mise en scène par Roslaw Szaybo en Pologne (Source Bibliothèque nationale de France)

エーヴ・マスカローによる寄稿

劇場は約束事の多い場所です。まず、舞台の上で起きていることが“現実”だと信じているふりをしなくてはいけません。私たち観客は、登場人物を演じているのは俳優であり、その虚構の世界が背景幕のこちら側にしか存在しないことも、よくわかっているのですが。時間もまた、実際には上演中も普通に経過しているのに、物語の中ではいきなり早送りされたり、巻き戻されたり、止まってしまったり。舞台から退場した俳優が、上着を羽織り、マフラーを巻いて戻って来ると…なんと半年が過ぎているではありませんか。さらに、メイクを施し、髪を白くすると、今度はもう10年後です。

文学の場合、時間は必ずしも自由になるものではありませんでした。演劇における時間の流れを一日に収めたいという願いは、アリストテレスとその著作『詩学』に遡ります。古代ギリシアの作家たちが芸術的正当性の基準とした「真実らしさ」という概念は、アリストテレスによるものです。それは、すべての戯曲の土台となる暗黙の了解を排するということでした。この束縛から逃れるには、ヴィクトル・ユーゴーとロマン主義演劇を待たねばなりませんでした。彼の戯曲の登場人物たちはさまざまな場所を行き交い、物語は時間にとらわれることなく進みます。

20世紀になると、物事はさらに加速し、前衛芸術家たちは時間の密度を自在に操りました。劇場で時間を遊ぶことは可能だろうか、と。サミュエル・ベケットの戯曲『ゴドーを待ちながら』で舞台に登場するのは、決してやって来ないゴドーという人物を待つ者たちだけです。周期的に上演されるこの劇の中では、毎日同じシーンが再現され、毎夜同じ物語が展開されますが…。そこで起きる出来事は、繰り返す度に同じなのでしょうか?それこそが時間の不思議であり、劇場の舞台が秘める謎です。

 

エーヴ・マスカロー

舞台芸術学の博士号を持つ。フランスのエコール・ノルマル・シュべリウール教員および研究員。

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