初めてのキャンドル

30.10.2015
diptyque_bougies

diptyqueが初めてキャンドルを制作したのは1963年。創業からわずか2年後のことでした。それまで三人の創業者たちは、生地の柄をデザインし、色を決め、プリント工程を管理し…とファブリックの制作に専念していましたが、やがて自分たちのテキスタイル作品に合うキャンドルを作れないかと考えるようになります。diptyqueではよくあることなのですが、このときもきっかけとなったのはやはり、自分たちと同じようにものづくりを行う職人、キャンドルメーカーでした。ヤマモモ蝋からアイデアを得た彼が、サンザシ(バラ科)やシナモン、紅茶といった香りでフレグランスキャンドルを作ってみないかと提案すると、三人はすぐにこの新しい冒険に夢中になったのです。

デスモンド・ノックス=リットはさっそく仕事に取りかかりました。お気に入りだった英国の伝統的フレグランスはもちろんのこと、彼は自然界に在る匂い、素材や身の回りのものが持つ香りが好きで、それらを嗅ぎ分ける嗅覚とセンスにも恵まれていました。音楽や絵画、演劇など様々なアートに通じていた母親から彼は多くを学びましたが、中でも特に関心があったのはパフューム。しかし、香りへの愛着を仕事に役立てることはあっても、商売にする気はありませんでした。彼はただ、パフュームに含まれる香りの正体、自然界を形成するエッセンスや花の芳香を嗅ぎ分けたかったのです。

最初に作られた三種のフレグランスキャンドルはすべて、サン・ジェルマン大通り34番地にあるブティックの上階、デスモンド・ノックス=リットのアトリエで生まれました。そこで彼は、三種の香りにぴったりの配合を見つけるために、数え切れないほどのテストを繰り返します。芳香を求めて、パウダーやエッセンス、ハーブやスパイスなど様々な材料をすり鉢で練り、混ぜ合わせる…そんな作業を愛した彼は、1993年に亡くなるまで、diptyqueの「鼻」でした。その制作過程はまた、彼の心と技のすべてを物語っています。細心の注意を払いながら素材を厳選し、自らの手でペーストを練り、仕事を楽しむ。香りへの献身、職人の感性、机上の論理やビジネス戦略にとらわれない心、冒険への渇望、本物を愛する思いが、そこにはありました。

当時、アロマキャンドルはまだ珍しく高価な品でしたが、diptyqueはブランドオリジナルの香りが楽しめるハンドメイドのフレグランスキャンドルを手頃な価格で提供したいと考えていました。デスモンド・ノックス=リットのアトリエで生まれた香りは、エコール・ド・ヴェルサイユで学んだ名パフューマーとの共同作業により、可能な限り精確に再現されています。

完璧な仕上がりを目指して、香りの種類別にワックスや芯を選び、キャンドルの芯は特別な接着剤で固定。ガラスの容器は、ワックスの表面がなめらかになるよう、あらかじめ温められたものを使いました。

ホーム&ボディ製品の香りをデザインする今日のdiptyqueは、サンザシ、シナモン、紅茶、この三種のフレグランスキャンドルから始まったのです。