モノケロース

21.11.2017
Philippe Baudelocque - Licorne

Philippe Baudelocque - Licorne

いっかくじゅう座は、星や光の集合体をまたぎながら、宇宙を駆けます。星雲を行き交い、ブラックホールをかいくぐり、このユニコーンはとらわれることなく、北半球と南半球を股にかけ跳ね回っています。

星座とは星の群れであり、明るく輝き、瞬く星と星の間を結ぶ想像上の線によって描かれます。それは、天体物理学とは関係のない、擬人化された投影像です。星座の多くは古代にまで遡ります。中国やギリシア、ペルシアの神話にちなんだものも多いのですが、いっかくじゅう座は、1613年、天文学者ペトルス・プランシウスによって名づけられたとされ、その後、1624年にヤコブス・バルチウス(ヨハン・ヘベリウスという説もあり)が精密な星図に表しました。過去には、この星座を発見したのはペルシアの天文学者であり、その際には別の名前で呼ばれていたのであろう、という研究者もいました。

いっかくじゅう座は、非常に巧みに図案化されていることから、学術的な研究の対象となりました。さほど目を引く星座ではなく、見つけにくいのですが、神秘的な魅力があるために想像をかきたてるのです。その極めてシンプルな形状は、疾走する競走馬の輪郭を思い起こさせます。まっすぐ伸びた線は、だれも実際には見たことはないけれども、すぐに目に浮かぶ、あのユニコーンの角のようです。

この星座は固有名を持たない星によって構成され、これらはユニコーンの古代名であるモノケロースにちなみ、βモノケロティスというように、最初にギリシア文字を冠して区別されています。このβモノケロティスは、いっかくじゅう座の中でもっとも明るい星です。またプラスケット星も位置しており、これは互いに重力を及ぼし合い両者の間を物質が移動する、いわゆる分光連星と呼ばれるものです。

天の川に横たわるこのいっかくじゅう座は、とくに明るい星が存在しないために、目立たない星座です。さらに天の南極と北極を分ける赤道上にあり、それがその姿をより一層見つけにくくしています。しかし、もっとも美しい星団や星雲がこの星座を横断しており、これこそがまさに、ユニコーンたらしめる確かな証なのではないでしょうか。