パン・デピス

10.12.2016
Septième ilkhan de Perse, l’illkhanide Ghazan Mahmud Khan (1271-1304) était l'arrière-petit-fils d’Houlagou Khan (lui-même petit fils de Genis Khan), fondateur des la dynastie mongole des Houlagides (ou Ilkhanides).

Septième ilkhan de Perse, l’illkhanide Ghazan Mahmud Khan (1271-1304) était l'arrière-petit-fils d’Houlagou Khan (lui-même petit fils de Genis Khan), fondateur des la dynastie mongole des Houlagides (ou Ilkhanides).

「パン・デピス(pain d’épices)」は、香辛料を使った焼き菓子です。フランスの伝統食で、16世紀末にはパン・デピス職人の同業組合も存在しました。その起源には諸説あり、さらに歴史を遡れば、古代エジプトやギリシャ、ローマ、中国、中近東、中央ヨーロッパまで広く普及していたことがわかっています。

パンはいろいろな種類の穀粉やレシピで作られ、多くのバリエーションがあります。地域によって使われるスパイスも同様にさまざまですが、蜂蜜はあらゆる文化圏で親しまれており、この3種の材料が結びついたのは、ごく自然なことでした。香辛料と蜂蜜を使ったパンは何世紀にもわたり、世界各地で食べられてきましたが、まったく同じものだったというわけではありません。ギリシャでは、ゴマ粉を原料とした、甘く体に良い食べものとして知られていました。ローマ市民もまた健康食として食べていましたが、貧しい人々にとって材料となる蜂蜜は貴重であり、神々への供え物として捧げられることのほうが多かったようです。ローマのそれは焼き菓子のようなもので、古代ギリシャの医師・ヒポクラテスが療養食として推奨していた、大麦粉とオリーブオイルで作る発酵蜂蜜パンとはまったく別物でした。 

意外なことに、フランスのパン・デピスは、小麦粉から作られる中国の「ミ・コン」が起源とされています。大昔の祖先たちにとって甘みのある食品は珍しく、特別なものでした。13世紀、チンギス・カンに率いられた兵士たちも、この中国発祥のパンを食べていたのでしょう。後の西征によって中近東に伝わったと考えられます。やがて、聖地エルサレムの奪還を目指して派遣された十字軍が、これをヨーロッパに持ち帰ります。間もなく東ローマ帝国の修道院から修道院へと広まり、「レープクーヘン」と呼ばれるようになりました。フランス北東部、マリーエンタールにあるシトー修道会の修道士たちを通じてアルザス地方へと伝えられ、クリスマスに供されるようになったのは2世紀後、1453年のこと。パン・デピスはついにフランスにたどり着いたのです。また一説では、ブルゴーニュ公フィリップ3世がフランドル遠征から持ち帰ったとも言われています。

15世紀のフランス宮廷でもパン・デピスは大変な人気を博し、シャルル7世の愛妾であったアニェス・ソレル、またフランソワ一世の姉、マルグリットの大のお気に入りでした。ですが、16世紀、アンリ2世の時代に、カトリーヌ・ド・メディシスの家臣たちがスパイシーな味に紛らせ毒を盛っている、という噂が流れたため、この焼き菓子はたちまち疑惑の火種となってしまいます。

1571年、シャンパーニュ地方の町、ランスでパン・デピス職人たちは同業組合を設立し、1596年、アンリ4世によって正式に認定を受けます。さらに次の世紀、ルイ14世の時代には、スウィーツをこよなく愛した王の寵愛を受け、その人気が復活しました。 

そんなパン・デピスですが、同じヨーロッパでも国によってそれぞれ特徴があります。フランスのそれは柔らかく、なめらかでしっとりとしていますが、北部のものはよりスパイシー。小麦粉で作られたものは”boichet”、雑穀粉で作られたものは”gaulderye”と呼ばれていますが、いずれも必ずライ麦粉が使われています。フランスでは今も、シャンパーニュ地方産の蜂蜜を使ったランスのパン・デピスは垂涎、最高峰の味とされています。

しかし、パン・デピスをもっとも愛したのは北ヨーロッパの人々だったかもしれません。この食べものは、グリム兄弟の「ヘンゼルとグレーテル」をはじめ、クリスマスにまつわるいくつもの童話に登場し、重要な役割を果たしています。こうしたさまざまな逸話に思いを馳せながら、diptyqueの2016ホリデーコレクション「エピス エ デリス( Épices et Délices)」のキャンドルは生まれました。原材料には、もちろんランス産の香料が使われています。