パフューマー&アーティスト:「伝統と革新」

11.06.2018
diptyque, collection ambiance 34

diptyque, collection ambiance 34

diptyqueは、アートに従事し、アートに情熱を傾ける、「アーティストの心」を持つ3人の仲間によって設立されました。このメゾンが香水作りの道を進むまで、そう時間はかからず…。3人のフレグランスの伝統への思いとアーティストとしての感性が相まって、diptyqueは新たな香りを模索し、革新を起こすことになるのです。

diptyqueは、サン・ジェルマン大通り34番地に開いたブティックの裏にあるアトリエで創作を開始。メゾンの取り組みを理解し、その実験精神、香りの探索といった考えに共鳴するパフューマーたちとの共同作業により、1963年以来、新たな香りの創造と提案を行ってきました。同年に発売された3種類のフレグランスキャンドルを皮切りに、1968年にはメゾン初のオードトワレ『L’Eau(ロー)』、それ以降、30種類あまりの香りを世に送り出しています。

これらのフレグランスのなかには、とりわけ注目に値する、革新的なものがあります。

たとえば、フレグランスキャンドル『Figuier(フィギエ)』に見られるイチジクとリンゴの香りの組み合わせは、diptyqueが発明しました。オードトワレ『Florabellio(フローラベリオ)』では、この組み合わせにコーヒーが調和することで、驚くほど独創的で革新的な香りとなっています。今でこそ一般的な組み合わせですが、これらはdiptyqueのフレグランスメゾンとしての歴史によって、初めて実現したものです。

「コンクリート」と呼ばれるソリッドパフューム(練り香水)では、数千年の間に失われた伝統を現代風に蘇らせました。練り香水自体は、名高いブランドによって20世紀初頭に特許が申請されていますが、蜜蝋を用いたアレンジにより現代に広めたのは、diptyqueの功績といえるでしょう。

カプセル交換式の電動ディフューザー『Un Air de diptyque(アン エール  ドゥ ディプティック)』には、特許申請中の革新的技術を取り入れています。砂時計型ディフューザー『Le Sablier(ル サブリエ)』にも、特許こそ取得していませんが、香水が芯の部分を伝い、熱を用いずに香りを拡散する画期的な新技術を採用しています。現代のせわしなく過ぎる時間にとらわれず、香水の雫がゆっくりと時を刻む様は、砂時計を思わせます。

最も斬新で技術的に難しかったと断言できるのは、diptyqueのブティックに漂う香りをカプセルに閉じ込めるというアイデアの実現です。これは「ヘッドスペース法」を用いて、稀少かつ絶滅のおそれのある入手困難な花々の香りを採取し革命をもたらした、香りの探求者であり化学者のローマン・カイザー、そしてパフューマーのオリヴィエ・ペシューによる取り組みでした。サン・ジェルマン大通り34番地に漂うさまざまな香りを捕集するのに数ヶ月、それからその地名を冠し、かくも愛される香水を完成させるまでは、さらに数年を要しました。

創設者3人の知性と独創性を受け継ぐことは喜びですが、斬新なアイデアの実現には最新技術による発明が不可欠であるという点においても、diptyqueは革新的なパフューマーであるといえます。diptyqueのモットーであり行動を起こす際のスローガンでもある「パフューマー&アーティスト」には、そんな思いが込められているのです。

「diptyqueにとって、香りとはアートであり、アートとは旅。それは、五感と精神が歩む、想像の旅です。予期せぬ調和をもたらす貴重な天然素材を求めて、香りの風景を巡りながら、過去から未来へ、伝統から革新へ…豊かな歴史を背景に、新しい発見と変化に満ちた場所へと向かいます。夢と現実、ふたつの世界を常に行き来してきたdiptyqueは、ジャンルや文化の違いを越え、刺激的な出会いを生み、アイデアの融合を実現してきました。表現者として、目、手、鼻をひとつに、驚くべき香りの世界を絶えず作り出しています」