ノルベルト・エリアス「時間について」

07.07.2017
Norbert Elias (1897-1990), Fondation Norbert Elias.

Norbert Elias (1897-1990), Fondation Norbert Elias.

ナタリー・エニックによる寄稿

ドイツ人社会学者、ノルベルト・エリアス(1897-1990)といえば、アンシャン・レジーム期、法服貴族が絶大な力を得ていた時代のフランスにおける文明化過程の研究で知られています。他にもいくつかの研究課題を持ち、そのひとつが時間の概念です。長きにわたって歴史社会学に仕え、また決して平坦ではない研究者人生を歩んできた彼は、身をもって時間の重みを知っていました。まだ無名の研究助手だった頃、ナチスの台頭によってドイツを追われたエリアスが、20世紀の社会学における世界的な第一人者としての地位を確立したのは、なんと70歳代になってからのことだったのですから。

ノルベルト・エリアスの著書『時間について』は1984年に出版されましたが、フランス語に翻訳されたのは1996年のことです。その中で、エリアスは時間を測定する装置(カレンダーや時計)について言及していますが、それ以上に徹底的に、時間概念そのものを論じています。いわく、時間は人間活動が始まる前から存在したのではなく、人間によって作り出されたというのです。時間とは、人間の経験に先立つ、客観的、先験的なものではなく、それを測定する手段によって生じた現象なのです。言い換えれば、時間とは事象ではなく活動であり、「創造された」機能とも呼べるでしょう。

時間の主たる機能は調節と統合です。元々、時間調節の機能は僧侶や王が担ってきたのですが、次第に測定装置に委ねられるようになりました。人間は自らを律する必要があり、そのためにこうした社会的機能が発明され、人々は物理的な基準(太陽の位置や時計の針)に従って、自分たちの行動を調節することが可能になりました。これらは、カレンダーに象徴されるように、国家が時間を標準化したおかげなのです。

原始社会の住民が、人間が作り上げたものだと十分わかっていながら、精霊を具現化したマスクを信仰していたように…時計によって先験的な存在である時間を<具現化>できるという<信仰>、これらの本質主義に基づく時間概念を、結果としてエリアスは解体しました。

 
ナタリー・エニックはフランスの社会学者。芸術社会学とノルベルト・エリアスを専門に研究する。