ドミノペーパー

27.01.2017
Détail d’un papier dominoté conçu comme décor mural. Le « papier de tapisserie » est considéré comme l’ancêtre du papier peint ; (collection de l’auteur, photo © Corinne Schanté-Angelé)

Détail d’un papier dominoté conçu comme décor mural. Le « papier de tapisserie » est considéré comme l’ancêtre du papier peint ; (collection de l’auteur, photo © Corinne Schanté-Angelé)

ヴァレリー・ユベールによる寄稿

「ドミノペーパー」とは、木版を使って図柄を印刷し、絵筆もしくはステンシルで色付けした、装飾用の紙のこと。幾何学柄や花柄が描かれたドミノペーパーは、18世紀後半のフランスで最盛期を迎えます。同じ頃、他の国々でも、それぞれ独自の印刷方法で大量の装飾紙が刷られていました。ドイツでは、銅板印刷で作られる、金をあしらった浮き出し模様の紙。イタリアでは、いくつもの木版を組み合わせて、非常に精巧かつ彩り豊かな紙が製造されました。

ドミノペーパーは、“Dominotier(ドミノティエ)”と呼ばれる職人の手で制作されていました。彼らは遊戯用のカードや版画を手がける工芸家でもありました。ドミノペーパー作りの歴史は複雑ですが、ドミノティエに関する記述は早い段階からあり、1540年には「カード製造業者・紙工芸作家・マスタードミノティエ職人組合」に属していたようです。しかし、正確にいつドミノティエが図柄入りの紙を作り始めたのかというと…。印刷屋、彫版師、ドミノティエ、カード職人、版画家といった職業の境界線は曖昧で、彼らを明確に区別するような18世紀以前の資料はほとんど残っていません。

ドミノペーパーは、箱や引き出しの内張り、ちょっとした調度品の装飾に使われていたほか、本や冊子の表紙としてもよく用いられていました。大柄な花模様は、錦織やコルドバの革細工、インドの織物から取り入れられたものです。壁紙としてデザインされており、何枚も貼り合わせることで、ひと続きになった文様が生まれます。当時まだ壁紙という言葉はなく、これらは壁掛け、あるいはタペストリーペーパーと呼ばれていました。

ドミノティエの工房はフランス全土に存在しましたが、パリ、シャルトル、ル・マン、オルレアンといった街はとりわけ重要な生産拠点で、人気の図柄や装飾紙が作られていました。中でもオルレアンのデザインは他を圧倒しています。

工房の多くは家族経営の小規模なもので、木版はドミノティエ自身あるいは専門の彫師に依頼して製作されていました。その木版を、“Frotton(フロットン)”と呼ばれる道具を使って、いわゆるクラウン判(約45×36cm)の紙に印刷。さらに、天然色素やアラビアゴムで出来た染料を用いて、手描きまたはステンシルで彩色します。完成した紙には、作品名、街の名前、型番が記されました。

ドミノペーパーは、職人の手で何千枚も印刷され、大量に世に出回り、安価で売られていました。短期間の使用を目的に作られていたため、その命ははかなく、大変人気があったにも関わらず、今では貴重なものとなってしまいました。けれど、完全に忘れ去られてしまったというわけではありません。近年になって、歴史家や収集家、職人たちにより、再び息を吹き返しました。