サイ・トゥオンブリーが描く古代の空

06.02.2018
Cy Twombly - Plafond de la salle des bronzes (détail), Musée du Louvre, Paris

Cy Twombly - Plafond de la salle des bronzes (détail), Musée du Louvre, Paris

その絵は、ルーブル美術館のブロンズの間の天井に浮かんでいるかのよう。鮮烈な青空に、空間を切り裂きながら、星のような円が踊っています。作者のサイ・トゥオンブリーが簡潔に命名した “The Ceiling”は、展示室に新鮮な空気を送り込み、古典美術のコレクションを見下ろす姿は、まるで額縁のようです。2010年に描かれ、アンゼルム・キーファー、フランソワ・モルレに続き、現代アーティストによる作品として、同美術館から常設展示の栄誉を与えられました。この巨大なフレスコ画がどのようにして完成したのかを理解するために、この芸術家の歩みを振り返ってみましょう。

トゥオンブリーは、第2次世界大戦後、抽象表現という芸術の新たなかたちを生み出したアメリカのアーティストたちと同じ世代に属しています。はじめトゥオンブリーは、ジャクソン・ポロックやウィレム・デ・クーニング、フランツ・クラインらと共に、この芸術の潮流に乗って、芸術表現の可能性を模索しました。しかし、古代や地中海文明の歴史に魅了されていた彼は、まもなく同輩たちと距離を置くようになりました。1952年、芸術そして西欧文明の起源を探るために、トゥオンブリーは友人のロバート・ラウシェンバーグと共にフランスやイタリア、北アフリカを旅し始めました。そして1957年、その情熱によって、彼はローマに永住します。トゥオンブリーの作品は、これまでの歴史の中で生まれた文学や芸術に育まれたものです。これらを参照しながら、シンボルやテキストを引用し、神経質に、そしてときにはほとんど判読し難い筆跡で、キャンバスの上に再現したのです。それは、謎を謎のままにするため、発掘した遺物の一部を隠そうとする考古学者のようでした。「私が立証しようとしているのは、現代アートが独立した存在ではなく、ルーツを持つということだ。伝統と継承。私にとって過去は、創作の源なのだ」と彼は語っています。

トゥオンブリーがルーブル美術館から天井画の依頼を受けたとき、ギリシャ彫刻の歴史と共鳴する作品にしたいと考えたのは自然な流れでした。彼は、古代ギリシャの7人の偉大な彫刻家たち、私たちが文学や複製を通じてしかその作品を知らないような彫刻家たちの名前を入れようと決めました。ペイディアス、リュシッポス、ミュロン、プラクシテレス、ポリュクレイトス、ケフィソドトス、スコパス。こうした伝説的人物たちの名前をギリシャ文字で加えることで、教会や神殿の天井を飾る絵画の伝統と再び結びつけたのです。自身も彫刻家であったトゥオンブリーは、古典彫刻の始祖たちを列聖しました。これは尊敬する彫刻家たちの足跡を再びたどるまたとない機会で、たとえばジョットがパドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂に用いた青は、ここで特別な共鳴を起こしています。トゥオンブリーが描いた円は盾、あるいは7人の守護者たちによって創られた宇宙に輝く惑星のようにも見えます。芸術的創造性を反映したいくつもの円は、瞬く星のように、月や太陽と交互に重なり合いながら、絶え間なく姿を変えています。証言そして遺言として、トゥオンブリーの”The Ceiling”は、一見単純ながらも、唯一無二の深遠さを私たちに示しています。「この広い空間の上に浮遊する感覚、光の明るさを感じたい(中略)私は天井を青空に向かって開いた。それはジョットの空だ」。