クリスマス・ピラミッド

15.12.2016
"Weihnachtspyramide" (pyramide de Noël)

"Weihnachtspyramide" (pyramide de Noël)

ドイツには”weihnachtspyramide”、クリスマス・ピラミッドと呼ばれる飾り物があります。19世紀、ザクセンとボヘミアの山間が発祥とされていますが、ろうそくの灯り、三角錐、回転するオブジェ…それぞれのシンボルの起源は、はるか昔、聖書に出てくるノアの洪水以前とまでは言わずとも、紀元前にさかのぼります。

このクリスマス・ピラミッドは、ドイツをはじめヨーロッパ北部にある国々ではとてもポピュラーなもの。階段状になった小さな木製の台の中央に人形が置かれ、その周りをろうそくが囲みます。ろうそくに火を灯すと、暖められた空気が上昇気流を起こし、上部にある羽根が回転します。温度変化によって空気が膨張する原理を利用しているのです。羽根とともにピラミッドが回り、人形たちはさまざまなシーンを演じ始めます。聖書の一場面や寓話、あるいはクリスマスにまつわる伝承…その光景に、子供たちは驚きに目を輝かせるのです。

クリスマスは、イエス・キリストの降誕を祝う祭事が世俗化されたもので、今や世界各地で親しまれています。キリスト教の祝祭として知られていますが、実は古代の宗教行事が取り入れられ変化したものです。かつて人々は、冬至の頃、日照時間が長くなることを願って太陽を崇める祭りを行っており、それがローマ帝国やエジプトでは現在の12月25日にあたりました。紀元4世紀頃には、イエス・キリストが生まれた日として伝えられるようになります。太陽と、新たに誕生した聖なる光、イエス・キリストが結びついたのは、ごく自然な流れといえるでしょう。キャンドルの炎は、そんな光の象徴なのです。アドベント(待降節)を祝う家庭では、クリスマスを迎えるまでの毎週日曜日、近づいてくる光、そして太陽の軌道に呼応して、ろうそくを1本ずつ灯します。

中世ヨーロッパにも、小さな柱を緑の葉と色とりどりのガラス玉で飾り、ろうそくを立てた、クリスマス・ピラミッドのようなものが存在しました。リンゴがあしらわれた常緑樹と同様に、クリスマスを彩るデコレーションとして使われていた円錐型のオブジェ。やがてそれはピラミッドの形そのものであるモミの木に取って代わられ、ガラス玉やリンゴで装飾するだけでなく、人々はその根元にキリスト降誕のシーンを再現するようになりました。

ゆるやかに円を描くドイツのクリスマス・ピラミッド、それは自然のサイクルと魂の再生を象徴しています。しかし、これらのシンボルだけでは世界は回りません。この回転式の小さなクリスマス・ピラミッドは、より安全で長時間燃えるパラフィンの発明なくして動くことはなかったでしょう。時代の変遷と結びつきながら、キャンドルの炎に照らされた小さなファランドール(プロヴァンス地方の踊り)の輪の上、科学と宗教が密かに手を取り合って、この慣習は今に続いているのです。