インドア&アウトドア用キャンドル:ヴィルバンのポット

22.11.2016
50 ans diptyque. Musee Nissim de Camondo. Paris. 22/09/2011 (© david atlan)

50 ans diptyque. Musee Nissim de Camondo. Paris. 22/09/2011 (© david atlan)

diptyqueの1.5kgのインドア&アウトドア用キャンドルが入った陶製ポットは、数々の賞に輝く南フランス・ロット県の陶磁器ブランド『Virebent(ヴィルバン)』によるハンドメイド製品です。同社は、フランス政府から卓越した伝統技術の継承者に贈られる無形文化財企業(Entreprise du Patrimoine Vivant)の認定を取得しています。 

『ヴィルバン』は、陶器や建築で知られた一家の名前です。ピュイ=レヴェックにあるヴィルバンの工房は、20年近く前からフレデリック・カイエとヴァンサン・コリンによって経営され、今日に至っています。この工房は、今では数少ないフランスの伝統技術を有する陶磁器メーカーのひとつ。ヴァンサン・コリンをデザイナーに据え、炻器や陶器、磁器などさまざまな素材を使って製品を生み出しています。

diptyqueは、創業以来常に、時間をかけて丁寧に作られた逸品と共に歩んできました。手仕事に魅せられていたdiptyqueの創業者たち。ブランドの発展は、ものづくりへの関心、そして現在まで続く職人たちとのコラボレーション抜きには語れません。手仕事とはつまり、ものづくりの作法であり、時代を超えて蓄積されてきた原材料に関する知識と経験によるものです。それは師匠から弟子へ、また別の職人へと伝えられていきます。この流れが一世代でも途切れてしまうと、蓄えられてきた知識は途絶えてしまいます。機械の利便性にたよらない手仕事は“時代のアート”。ひとりの職人の手からまた別の職人へと受け継がれていくのです。 

diptyqueのインドア&アウトドア用キャンドルの特徴は、室内でも庭でも香りが楽しめるように作られていること。キャンドルの入った陶製ポットは、屋内外での使用を想定し、堅牢かつ美しくデザインされています。2010年にプロジェクトが起ち上がったとき、ヴィルバンとdiptyqueには、あるアイデアがありました。楕円の中に「踊る文字」を刻むというものです。その実現に至るまでの製造工程にはいくつか課題が待ち受けていました。見た目の美しさ、気温の変化への対応、刻印の加工、鮮やかな彩色、そして、それらの条件を満たす粘土の配合と窯での焼成時間。耐水性と耐低温性のある炻器は屋外での使用に向いていましたが、刻印を施すためには、本来の強度を損なうことなく、工程に適した粘土を見つけなければなりませんでした。そこで、強度を高めながら刻印が可能な程よい厚さで成型できる、きめの細かい陶石を探すことになりました。きめが細かいほど、硬度が増すのです。

まず初めに、ポットの原型から型取りした鋳型が必要です。これは、工房にある古いろくろを使って作られます。次に鋳造工房で、できあがった鋳型に泥漿(水で溶いた粘土)を流し込みます。各工程は細心の注意を払って行われ、粘度と濃度を確認するために、ひとつひとつ重さを量っています。それから成型された素地を鋳型から取り出し、乾燥させます。その後、ブラシやスポンジで表面をなめらかにすれば、成型作業は完了です。ひとつの鋳型で一日一個の生素地が作られます。

最初の焼成は「素焼き」と呼ばれ、窯の温度は1000℃。このとき粘土(生素地)は固まっていますが、まだ浸水性のある状態です。焼成と冷却はその都度正確に時間を計りながら行われます。これが唯一テクノロジーを使う工程で、窯の温度や焼成時間はコンピューターで制御されています。その他の工程はすべて手仕事によるもの。ポットを窯に入れ焼成を始めてから冷ますまで、計18時間を要します。

次に、素焼きしたポットの表面に釉薬(うわぐすり)をかけます。素焼きは水を吸水しやすく、これにより釉薬を浸透させることができます。釉薬には顔料が含まれているもの、あるいはさまざまな成分が窯で焼く際に酸化して発色するものもあります。最後に、釉付けしたポットを、1300℃に熱した窯に戻します。これは「本焼き」と呼ばれ、常温に冷ましたポットを窯に入れて焼き、その後再び冷ます、計22時間の工程です。

キャンドルの香りには、それぞれ独自の色があてられています。『Feu de bois(フ ド ブワ)』は透明感のあるグレー、『Figuier(フィギエ)』は光沢感のある乳白色、『Tubereuse(テュべルーズ)』は赤、『Baies(べ)』はマットブラック。そして、大きな流れ星はどうでしょう?黒地に星が散りばめられた巨大なクリスマス限定版『Baies(べ)』のキャンドルのポット。金色の星は手描きです!新たな技術を使った繊細な手仕事。それは、ヴィルバンで蓄積された経験や知識と交差しつつ、他の職人たちと共に新しい手法を試みながら専門的技術として結実したものです。一週間の時間を費やして、ようやくひとつのポットが完成するのです。

ひとことで言えば、すばらしいポット。ですが、もちろんポットだけではありません。そこに入るキャンドル、そのサイズと用途に合わせたな特別な配合のワックス、5つの技法で作られたキャンドルの芯。もちろん、すべて手作りです。キャンドル製作には、ヴィルバンにとどまらず、また別のストーリーがあるのです。