すべては3色でできている

22.05.2018
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私たちの目の前にあるディスプレイには、ありとあらゆる色があふれているように見えます。ところが、これらの色を作るには、たった3色で十分です。目に入るピクセルの世界では、「人生はバラ色」。コンピューターにおいては、カラーコードを使えば、悲観的な意味ではないにしろ、自由自在に視覚を欺くことができるのです。

色を表現する方法には便利なものがいろいろありますが、その裏には非常に難しい技術が存在します。1869年、ふたりのフランス人科学者、ルイ・デュコ・デュ・オーロン(Louis Ducos du Hauron)、そして詩人でもあるシャルル・クロ(Charles Cros)が、それぞれの研究成果をフランス科学アカデミーに報告しました。このふたりは、互いに面識はありませんでしたが、カラー写真を紙に定着させるという同一の研究課題に取り組んでいました。研究の結果も同様で、「三原色の原理」、すなわちヒトが知覚できるすべての色は3つの原色(混じり気のない色)から作ることが可能であるという原理を利用した混色法のルーツとなっています。

光の三原色の加色混合を用いたコンピューターによるカラーシステムは、RGB(Red(赤)・Green(緑)・Blue(青))と呼ばれ、3色はコードで表記されます。各ピクセル(「picture cell(画素)」の省略形、デジタル画像の最小単位のこと)には、光の三原色である赤、緑、青のそれぞれの明度を示す数値が設定されています。肉眼では、これらの色の網点を見ることはできません。この3色をさまざまな比率で混合することで、すべての色を再現できるスペクトルとなります。

ヒトは三色型色覚をもっており、3種類の錐体細胞によって色を認識しています。これらの錐体細胞が、電磁波を電気信号に変換することで、色を知覚しているのです。3種類の錐状細胞は、それぞれが光のスペクトルにおける異なる波長に反応します。これによる3種類の電気信号から、光のスペクトルが網膜のなかで再現されます。

「色」とは、絶対的なものではありません。色は神経の働きによって知覚されています。しかし、その認識プロセスは、感覚の形成に影響を及ぼす文化、地理、心理、記憶、言語など、それ以外の要素と切り離せません。それゆえ、色とは「人工」であるのか「天然」であるのか論ずることも容易ではないのです。一方で、RGBシステムでは混色効果により、ディスプレイに映る色は肉眼では識別できないほど、実際の色に近くなります。

色について語るのなら、Carnovsky(フランチェスコ・ルージ(Francesco Rugi)とシルヴィア・キンタニージャ(Silvia Quintanilla)からなるアーティストデュオ)によるプロジェクト『RGB』ほど興味深いものはありません。このプロジェクトでは、視覚芸術における表層や奥行きといったテーマを実験的に追求しています。光の三原色を用いて色刺激を与えることで、静止画であるにも関わらず、それぞれが相互に作用し、鑑賞者の感覚に変化をもたらします。重なったモチーフが3色のフィルターによって浮かび上がることで初めて、私たちの眼はそれらを識別できるようになります。平面だったものが、奥行きをもち、広がりはじめるのです。この巧妙な三原色法は、視覚を惑わせ、気づかないうちに知覚に作用し、私たちをたじろがせます。Carnovskyのふたりはdyptiqueとのコラボレーションにおいて、ヘスペリデスの園を3色で演出しています。