水に映る影

27.03.2017
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『L’Ombre dans l’Eau(ロンブル ダン ロー)』は、数々の巡り合わせが生んだフレグランスです。思わぬ偶然から見出された運命的な香り。友人たちと共にアイデアを出し合い、思い出を分かち合い、力を合わせて、それをかたちにする…。そこには懐かしい記憶が詰まっています。

ディド・マーウィンは、diptyqueの3人の創業者たちの良き友人であり、かつてブティックで売られていた伝説的なポプリ『Le Redouté(ル ルドゥテ)』は、彼女が調香したものです。ある日、バラとカシスが織りなす香りに衝撃を受けた彼女は、ふたつの組み合わせがいかにすばらしいか、創業者のひとり、デスモンドに話しました。そうして、バラとカシスのマリアージュという発想をもとに、彼は香水作りに取りかかります。

この幸運な偶然から生まれた香りの話を耳にしたとき、もうひとりの創業者、クリスチャンヌの脳裏には、あるイメージが浮かびました。それは、ローズとカシスが自然に混ざり合い調和する、記憶に刻まれた子供時代の感覚、実家の庭の情景でした。深い緑が生い茂るその小さな庭は、フォンテーヌブローの森のすぐそばにあり、運河に面していました。菜園のとなりで、カシスやラズベリー、アカフサスグリなど、いろいろな果樹が枝を広げ、多くの花々も植えられていました。ライラックやスノードロップ、サクラソウ、アジサイ、ルピナス、ピンクカーネーション、ピンクスズラン、たくさんのバラ…。庭から小川へと続く土手では木々が影を落とし、ときにはゆったりと水面を往く白鳥を見かけることもありました。バラとカシスの香り、ただそれだけで、苔に覆われた涼しげな川辺、流れる水の音、静かな気品を漂わせた白鳥、そして水に映る影…これらの光景が、クリスチャンヌの心に蘇ったのです。クリスチャンヌの思い出にヒントを得て、デスモンドは香水のイメージをすぐさま絵にしました。

『L’Ombre dans l’Eau(ロンブル ダン ロー)』誕生にまつわるエピソードは、diptyqueを表しています。出会いから生まれ、友情、自然、思い出、幸運を運ぶクリエーション。それは運命に導かれ、創造を通じて過去と未来を結ぶことで紡がれるのです。